160918: 1V の検出(追記編集あり)

 テスタを使えば分かる、でなく「赤色 LED が点いたらお前はアウト!」と分かりやすいものが欲しい。と思ったのだ。

 この手の記事は暮らしをよくするとか、自慢(工作クラスタから自慢を取り除いたら何も残らない)か、あるいは情報共有といった類であると思うが、それを実際に適用できるかというと、自分一人で使うわけではないものであればゴテゴテと改造できない場合がある。

なので本回路は一応実動するのであるが、暮らしを良くしている結果が書けないために構想ノートという事になる。


 さて、なぜ 1.0 V を知りたいのか。1 V といえば想像に易いご存じ広く知れ渡ったあまりにも有名な周知の、ニカド電池の終止電圧である。電池は難しいので間違っている可能性大であるが、私の認識としては容量が残っている事、と終止電圧はあまり関係が無い。

モーターなど負荷の大きい回路で動かなくなるまで使ったニカド電池も、休ませれば少し回復する事が知られている。この状態の電池を容量(つまり mA)を食わない検出方法で電圧を測定すれば 1.1 V と表示されることもままある。

しかしこの残り容量と、「電池の機能を維持」できるか、言葉を換えると「電池の機能に破壊的な影響を与える要素としての電圧」は別の意味を持つ。1.1 V 程度ならリモコンは動くだろう。しかしそのまま使い続けて 0.8 V くらいまで下がるだろうか、そうなれば過放電で、知らず知らずのうちにじっくりと痛んでゆく(こういう話にコスパを持ち込まないこと。痛もうが 100 回は使えるので元はとれる。だがこれはそういう問題ではないのだ)。

 これを防ぐには電池にダメージを与える壁を検知しなくてはならない。1.0 V の壁というわけだ。なら話は早い、電池をテスタで測れば良い。

…それが面倒なのである。面倒は発明の母である。

余談であるが、電子回路をまだジュールシーフしか知らない頃から 1 V を検出したくて、「でもこれ絶対手間の方が上回るよな…」と予想していたが、回路にしたみたら思った通り本末転倒感あふれる仕上がりになった。今となっては使わなくなったツェナーの理解に3時間かかったり、…まぁ、経験である(便利な言葉)。

回路図

※この図は現時点では良くないです。本ページ下部により正しいと思う書き方の図があります。

 LTSpice にて表示用に回路図を用意した。本流の書き方は分からないし、検体の記号なんてないのでテキトーに漁って私がそれっぽいと思った記号をとった。コイルの向きも間違ってるかもしれないし VR は仕様上無いようだ。間違いは気づいたらその都度修正する。

以下、検出についての解説をする。


1.TL431 で比較のための基準電圧を得る

 安定した電源、もしくは基準電圧が無いと電圧の比較はできない。基準電圧を得る方法はいくつかある。その中でも手持ちの部品であり、比較的精度が高いことで知られる TL431 を用いる方法を採用する。TL431 はシャント型レギュレート方式の三端子(定電圧)レギュレータである(デイラスィール: www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/tl431.pdf)。

シャント方式なので電源と並行にすることで出力を安定させる。記号はツェナーダイオードと似ている。アノードとリファレンス間の電圧を 2.495 V に保つがたくさんの電流は流せない。つまり TL431 によって作り出されるのは電圧のみであり、電流を要求する回路には不向きなのだ。この点、本回路で求める能力は電圧の比較であるので最適であり、オペアンプによる比較もまた電流は必要ない。したがって分圧による電圧をオペアンプ (+) に送ってやる方法で充分に欲しいものが得られる。

 一般にレギュレータは望む電圧より 3 V 程度高い電源電圧を必要とする。回路を作っていくうちにこのネックに気づいた。安定した出力が得るには 6 V 程度は欲しいところだ。6 V というとこれは面倒なことになる。電池なら(ニッケル水素を用いるとして)5 本必要になる。電池の 1 V を検出するために電池がこんなに必要なのはバカげている。また私の開発方針として 9 V 電池を使うのだけは絶対に避けたい。しばらく考えているとジュールシーフが浮かんだ。TL431 およびオペアンプ、LED など、この回路は幸運にして大電流を必要としない。知りえる知識でこれ以外に良い方法は無かった。


2.電源部はパスコン付きジュールシーフ

 「電池一本で灯す!白色 LED による電子工作入門」と銘打たれた記事を一度は見たことがあるだろう。ジュールシーフはおそらくもっとも有名な昇圧回路である。

また、コイルの敷居が非常に低い。トロイダルコイルを使っている例が多いように見えるのは効率と入手性の均衡だろうか。ラインフィルタでも点いたし、トーラス形状のフェライトコアさえあれば USB ケーブル使われる細い信号線コードでも対で 9 回巻いたものが機能した。空芯コイル、マイクロインダクタでも機能したという記事もどこかで見かけた。

 ジュールシーフはほとんどの場合指示通りに再現すれば動作する。コイルとトランジスタの機能をうまく使ったよく出来た発振回路であり、単純なパーツの組み合わせなのだが瞬間的に 5 V 程度の電圧を起こす事から、順方向電圧の高い白色 LED が点灯する。

で。これにパスコンをつけたらどうなるのかなぁと実験してみると 8 V くらいは得られるのである。オシロを持っていないながら反論すると、キャパシタは入力電圧を保持するので、実際はわずかながらであれ 8 V にまで昇圧されているという事になる。 <160926> 今は、キャパシタに溜まっている電圧がフィードバックされて、1.01 倍みたいなことが積み重なっているのかもしれないと想像している。

電流を使わないものにならという限定的なものではあれ、電池一本が五本分に早変わりするマジックは、いざという時にありがたい。

実際やってみると昇圧には少し時間がかかる事、それからこの検出君の電池がきちんと昇圧に足る電源として機能しているのかのパイロットランプは必要だったので緑色で表示する事にした。最初はツェナーを使おうとしていたが思ったより電圧カーブが緩慢だったので、無駄なのでやめてしまった。電源部はこれで決まった。

<160929> 打ち消し部について。抵抗をテキトーに選んでしまい、ベース電流を絞りすぎていた事にしばらく気づかなかったのだ…。ある程度見当をつけるとあっという間に昇圧される。おそらくパスコンもいらないのではと思うが脈流なので、一応二つの IC を使うのだからせめて平滑するのがマナーだろう。

<161028> 日本語で最も詳しいジュールシーフの解説はこちらでしょうかね(http://abcdefg.jpn.org/elememo/blockingosc/cc.html


3.オペアンプで比較

 オペアンプの基本動作そのものについて説明するのは避ける。

オペアンプ (+) には先ほど述べた TL431 による、基準電圧を分圧した電圧を用いるが、さてどう分圧するか。この値の決め方は、電池の電圧を調べて「まだ大丈夫だな」と思って使っているうちに 1.0 V を下回ってしまうのは手遅れであることを踏まえると、1.01 V を下回っていないうちに「これはまずいですぞ!」と教えてほしいものだ。多く見積もって 1.1 V を下回った頃には検知したいものだ。結構シビアな値なので半固定抵抗を用いるが、これは選んだ抵抗値が大きすぎることに起因するが、それにしても値が物理的な接触で簡単にズレてしまうので実験回路にて抵抗値を得るために一時的に用いることにする。基板に実装する段階では、合成抵抗で微調整したカーボン抵抗に置き換える方法でまず大丈夫だと想像している。

オペアンプ (-) には検体、電池の+極を入力する。そしてこれも実験回路では気づきにくい、実際に基板に実装して、箱にでも詰めたとして電池の向きをどうするかである。

一般に電池が逆に入らないようにするか、ダイオードで逆電圧をブロックする。しかし本回路でダイオードを入れるとなると電池の電圧が下がってしまう。順方向電圧降下の小さい SBD(ショットキ バリア ダイオード)でも良いが、そんなことしなくても分圧の抵抗値をそのダイオードの Vf の分だけ上乗せした方が話が早い。しかし、ダイオードは 1 ℃ あたりの熱抵抗が非常に大きい。これはシビアな電圧を取り扱う回路にとってあまりにも影響が大きすぎる。

ここで用途に立ち戻ればこれは私が使う回路である。またデザインによりプラスとマイナスをきわめて間違えにくくする方法もあるはずだ。よって検体の入力にはダイオードは使わないこととする。

 おそらくこの後に充電器関連を弄り回すので、その事を追記するか、新たに記事を設けるか。とりあえず、これは構想なのでユニバーサル基板にはんだ付けする事もなく、回路だけを公開して終わりとする。


このような機能を回路にしたものがトップ画像のものである。電圧が上がり、ほわっと LED 緑が点灯する。これは検出君が機能していますよというサインでもあり、昇圧が終わって検出可能ですよのサインでもある。分かるかわからないほどのディレイの後、検体の電圧を測定し、指定値を下回った場合は LED 赤が明るく点灯する(オペアンプから約 4.8V が来るため明るい)。

IR9358 はテレビから取ったデュアルオペアンプ。元手はタダではあるが、ユニバーサル基板化するのは少しもったいないなぁと思っている貧乏である。


160919 追記

 時間を置くと間違いに気づいたり、もっと効率的な配置になると思って何度も図を直しているのだが、手元に回路が無ければ落ち着いて抵抗の計算ができる性格。

まず昇圧。1.2 V なら 330 Ω だと 3.64 mA、ちょっと少なすぎる。普通の 1/4 W カーボン抵抗で 100 Ω だとしても P= I^2R だから 0.0144 W。充分に大丈夫な熱である。100 Ω が手元に無ければ仕方ないが、回路図で示すならこれで電気、熱的な説明に充分だと思った。

それから R2。9V が来ると仮定して 1 kΩ なら 9 mA。昇圧インジケータ LED1 のためではあるが、TL431 用としてもそのまま使える。直前の R3 は不要ではないか。

あと気になるのはオペアンプの結果には負か正の最大出力が出てくるわけだけど、ここから 4.8 V くらいが出てきていた。この電圧はオペアンプの損失分を引いたものなのか、TL431 のレギュレーション電圧と分圧されてるのか、なんでちょっと低いのかまだ分からない。

とりあえずこっちの方がスマァトじゃないか、という図です。

何度書き直してもあぁここがあぁそこがと思うんだなぁ、という事です。(2016/09/19 追記)

160928 追記

 電池モードというものが備わったテスタがあるらしい。60 Ω くらいの低抵抗で電圧を測定する。電流の式 I=E/R からも分かるように、低抵抗には大電流が流れる。供給能力が無ければ電圧が ガクッと下がる事を利用し、まだ元気かを測定する方法だ。ほぼ新品のニッケル水素で試してみた所、電圧がほとんど下がらなかった。古い P 社のニカド電池 1000 mAh のものは寿命をとうに迎えていて、もうみるみるうちに単位がミリボルトに割り込んでしまう。ここで驚いたのはタミヤの 700 mAh ニカド電池である。すごい。十何年前から、二次電池のことを何も知らずにモーターで、電球で、長い事酷使してきた電池だ。それが充電して一か月たっても自然放電に気づかないくらい容量を保ったまま、俗にいう “冬眠” もせず、高い負荷(セメント抵抗 3.3 Ω)との閉回路でもほとんど電圧が下がらない。この素晴らしいセルを作ったのはどこのメーカーなのか…

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月札秋幌の電気日記

思うのは電気の良さです。